離婚の持ち家/ローンありなし対策まとめ

今回は、離婚にあたって持ち家ローンがある場合とローンがない時の男性側からみた対策を解説しています。

持ち家のローンは、住宅ローンが有るかどうか。不動産価格と住宅ローンの残債務によっても財産分与が大きく異なりますので、該当しているところをご覧いただけたらと思います。

持ち家のローンありの離婚

ここでは、家(マンション)などの不動産を購入して、住宅ローンが現在残っている状態の時にローンをどうするのかという話をしていきます。

ただ、持ち家があり住宅ローンが残っているからといって、全部同じには考えられないところがあります。主に2つに分類されます。

2つのパターン

①家の価格<ローン残債務
②家の価格>ローン残債務

2種類によって対策が異なりますので、順番に見ていきましょう。

家の価格<ローン残債務

まず、住宅ローンの残債務よりも家の売れる価格が安いケースです。住宅ローンが残っている状況での離婚で、最も多いパターンです。

この状態を専門用語でオーバーローンといいます。このパターンでは、2つの財産分与のやり方(学説)があります。そのことに注意しましょう。

①住宅ローンを財産分与に含める。

まずは、住宅ローンのマイナス部分を財産分与に含めるタイプから説明していきたいと思います。

財産分与に含めるケース

●夫婦共有の預貯金 1000万円
●不動産の売れる価格 1000万円
●住宅ローンの残債務 2000万円

この場合、不動産価格と住宅ローンの残りで、-1000万円になります。そのため、マイナスとプラスの財産を相殺して、0円になります。

●1000万円+1000万円-2000万円=0円

 

この例であれば、預貯金の財産分与は必要がありません。これは、協議離婚の実務上で利用されている財産分与です。負の財産も夫婦で連帯するという民法761条を根拠としています。

民法761条(日常の家事に関する債務の連帯責任)

夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と法律行為をしたときは、他の一方は、これによって生じた債務について、連帯してその責任を負う。 ただし、第三者に対し責任を負わない旨を予告した場合は、この限りでない。

この法律から、住宅ローンも夫婦連帯責任だと考え、マイナスになった金額とプラスになった金額を相殺していきます。

基本的に、男性が住宅ローンを支払うようになっていることが多いことから、この方法で財産分与をすることをおススメします。

 

そもそも、離婚後の住宅ローンは名義人が支払っていく必要があります。もしくは、持ち家を売却した後のローン残債を名義人が支払うことになります。

そうなることを考えれば、不動産価格のマイナスを預貯金などの財産分与から控除することは、公平で納得感が得られます

 

なので、住宅ローンのマイナス分を預貯金などの他の資産と合算するようにしましょう。

②不動産が財産分与に含まれない

2つ目は、不動産の財産分与に含まないケースです。主に、離婚裁判などで行われる財産分与のやり方です。先ほどの例で、同じように考えます。

財産分与に含まないケース

●夫婦共有の預貯金 1000万円
●不動産の売れる価格 1000万円
●住宅ローンの残債務 2000万円

オーバーローンの持ち家は、不動産で見た時にマイナスになります。

●1000万円-2000万円=-1000万円

 

マイナスになる財産は、財産分与に含まれないという考え方になるので、共有預貯金の1000万円を財産分与することになります。つまり、夫500万円、妻500万円になります。

1000万円の内訳が夫が900万円、妻が100万円の預貯金だとすると男性が400万円財産分与で失うことになります。

 

離婚裁判などで利用されることの多いこの財産分与の方法は、不公平な部分があります。それは、不動産が夫の名義になっていれば、夫が住宅ローンを支払い続ける必要があるためです。

金融機関は、離婚は当人同士の問題で、お金のローンを組んでいるのは名義人ですので、支払いは名義人がしてもらわなければ困ります。

 

しかし、夫からするとこれはかなり厳しい話です。子どもがいると、住宅ローンのほかに養育費の支払いも必要になります。慰謝料の支払いがあることもあるでしょう。

自分(夫)が引越して、妻と子どもが持ち家にそのまま住むというパターンも多いです。その場合、夫が新しく住む家の家賃も必要になります。

 

住宅ローン+慰謝料+養育費+自分の家賃を支払っていき、生活に余裕がある人はそう多くありません。

このような不公平な財産分与をしてしまうと、養育費や慰謝料などのお金を減額するように妻と話合う必要がでてきます。

 

現実問題として、ずっと払い続けることができなくなり、やがて住宅ローンが支払えなくなると破産するしか方法がなくなります。

そうなると、妻と子どもが住む持ち家は競売に進むことになります。そのことをしっかりと説明して、①住宅ローンを財産分与に含めるようにしましょう。

 

ここをしっかりと話し合っておかないと、男性側が慰謝料+養育費+住宅ローン+自分の家賃で破綻してしまいます。

不動産が任意売却になっているパターンの5割は、離婚からみです。男性側も無理なものは、無理と主張するべきです。

③住宅ローンを養育費かわりにする

残った住宅ローンの財産分与のやり方は、2種類あることがわかりました。そのうえで今後、住宅ローンを誰が支払って、誰が住むのかという問題が残ります。

住宅ローンの問題として、最も多い対策としては住宅ローンの支払いを養育費かわりにするという方法です。

 

これは、離婚後に持ち家の名義を妻にして住宅ローンは夫が払い続けるパターンが一番わかりやすいかなと思います。

妻と子供がその家に住みつづけ、養育費の代りに夫が住宅ローンを払い続ける方法です。実際には、男性にとっては、あまり有利ではありません。

しかし、現実的にはよく行われている方法ですので、家をどうしても売りたくないのであればその方法を選択することになるでしょう。

選択肢としては、「養育費かわりに住宅ローンの支払いは男性に得なのか?」の記事に詳しく書いていますのでそちらをご覧ください。

 

簡単に言うと、夫⇒妻に名義変更にする。夫⇒妻に賃貸する(養育費と相殺)、夫⇒妻に使用貸借するの3つの方法があります。

④不動産を売却する

家の価格<ローン残債務のパターンで、もう一つ考えられる方法としては、持ち家を売却してしまうという方法です。

家族で住めなくなるのであれば、売却するという考え方です。住宅ローンを支払い続けるよりも家計は楽になります。

 

ただ、オーバーローンの不動産売却は任意売却という方法でないと売れません。債権者(金融機関)が通常通り売却することを認めてくれないからです。

任意売却をするためには、しばらく住宅ローンを支払いをストップしないといけません。3ヶ月~6か月の間、住宅ローンを支払いをストップして初めて債権者は任意売却に応じてくれます。

 

その間、住宅ローン分を貯金して引越し費用にあてましょう。また、任意売却の相談は、任意売却の経験のある不動産業者にしましょう。

不動産売却の中でも、任意売却は特殊な分野ですから経験のある業者でないと適切なアドバイスがもらえません。

 

専門の任意売却業者に相談することで、借金は残りますが不動産は売却できます。もし、大きな借金が残るのであれば、自己破産することもできます。

不動産を売却すれば、住宅ローンの支払いを続けるよりは生活はずっと楽になります。これまでと異なり貯金ができるようにもなります。

 

借金が残るため持ち家の売却は躊躇すると思います。しかし、実際には離婚後に不動産を売却して新しいスタートを切っている人は多くいます。

そういう人は、口をそろえてこれまでぎりぎりだった生活から貯金ができるような生活になったと言います。

 

自己破産をしないとしても、離婚きっかけで不動産を売却をする方が良いケースの方が多いです。必ず検討してみてください。

そして、もちろん任意売却で不動産を売却した残りの住宅ローンは、①財産分与に含めるようにしましょう。つまり、財産分与の預貯金から残っている住宅ローン分を引くようにしましょう。

家の価格>ローン残債務

家の価格>ローンの残債務よりも多いとき(アンダーローン)は、売ったら利益になる部分が財産分与されることになります。わかりやすく説明すると以下のようになります。

●家の価格2000万円-ローン残債1500万円=500万円

 

この時、500万円が財産分与されます。つまり、妻と夫の間で250万円ずつの財産分与になります。家をもし売らない場合は、家の持ち主が夫なら250万円を妻に支払うことになります。

ただ、オーバーローンの時よりは問題が発生しません。不動産を売れば、現金化できるので不動産が実際に売れてから財産分与を振り込むことにすればよいからです。

 

実際の多くの持ち家は、オーバーローンになっていますが、近年はマンションの高騰などで購入時より値上がりしていることもあります。

そういったケースでは、不動産を売却するか。売却しないかを自分で判断することができます。

 

アンダーローンのケースでは、持ち家の査定がとても重要になります。不動産査定が高く、その価格で財産分与したけど、実際にはその査定価格では売れなかったら困るからです。

なので、不動産業者に査定をしてもらうときに高値ではなく、3ヶ月で売れる価格にしてほしいことを伝えると良いです

 

実は、離婚を扱う弁護士も不動産価格は不動産業者に査定してもらいます。その際に、立場によって叩き売る価格で査定してくださいと要望を出したりします。

弁護士も誰から、離婚の仕事の依頼を受けているのかによって、その人の要望にあった査定価格を出してもらっているのです。

持ち家のローンなしの離婚

ローンなしの離婚のケースでは、持ち家を売ったらいくらになるのかというのが重要になります。ローンがないので、財産分与には100%組み入れられます。

私は、男性の立場で離婚相談のブログを運営しています。そのため、ここでもアドバイスできることは、なるべく安い査定金額を出してもらえるように不動産業者に査定依頼することです。

 

具体的には、先ほどにもお伝えしたように「3ヶ月で売れる価格を出してください。」といえば、価格は必然的に通常よりも安くなります。

不動産というのは、売る期間が短ければ安くなるからです。また、安い査定価格を数社もっていれば信憑性も増します。

 

通常、不動産業者の査定というのは売れる価格よりやや高めに出す傾向があります。それは、売り主が高い価格をつけてくれると喜んでくれるし、売れるまで価格を下げればいいと考えるからです。

しかし、離婚に際して持ち家の名義人は、安くなった方が財産分与が少なくてすみます。なので、「3ヶ月で売れる価格」を査定してもらうと良いでしょう。

 

ローンが残っていない場合、持ち家の価格が安くなれば財産分与で有利に働きます。そのことを意識しておきましょう。

まとめ

今回は、離婚して持ち家の住宅ローンがありなしの対策をお伝えしてきました。特に重要なのは、住宅ローンが残って、オーバーローンの時です。

オーバーローンの住宅は、住宅ローンのマイナスが財産分与に入らないと男性側が非常に不利になる可能性があります。

 

協議離婚では、財産分与に住宅ローンのマイナスを含めるのが実務では主流です。住宅ローンのマイナスを含めるようにしっかりと主張していきましょう。

協議離婚をする際にしっかりと話あって、住宅ローンのマイナスは夫婦の共有であることを伝えていくべきです。

 

もし、住宅ローンのマイナスを財産分与に含めないように相手が主張するのであれば、破産の必要がでることや住宅が競売になることを妻側に伝えていきましょう。

また、ローンなしのケースやローン<住宅価格の時に、業者への査定をしてもらう方法もお伝えしました。財産分与の中で、不動産は価格が大きいのでキモになります。

 

損をしないように、何度もこの記事を読み返してしっかりと準備をしていただければと思います。

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