今回は、離婚をするにあたって貯金は折半しなければならないかという疑問を解説していきたいと思います。
離婚の財産分与は、離婚裁判になれば原則折半です。そのため、財産分与は必ず半分にしなければならないと思っている人が多くいます。
特にインターネット上の弁護士の言葉を見るとそのように書かれています。しかし、実際の離婚では、財産分与はキレイに折半できるわけではありません。
財産分与の対象にならない貯金
まずは、財産分与になる貯金とならない貯金というものからお伝えしていきます。ここは明確にしておく必要があります。
財産分与になる貯金としては、婚姻中に行った貯金のほぼすべてがそうです。基本的に、夫婦生活を営むなかで夫が行う貯金も妻が行う貯金も財産分与の対象になります。
そのため、離婚裁判になると合算されて折半されるというのが基本的な考え方です。しかし、これには例外があります。
●結婚前から貯めていた貯金
●相続で受け取ったお金の貯金
婚姻期間中に夫婦共同生活で行った貯金は、原則、財産分与の対象になります。しかし、その例外として結婚前の貯金と相続で受け取った貯金があります。
これらについては、財産分与からは除かれます。つまり、折半の中には含めないということになります。
結婚する前の貯金とは、結婚の日よりも前に残っていた貯金額です。男性の場合は、結婚の日付を確認して、それよりも前の預貯金の金額を引きます。
女性の場合は、旧姓のまま貯金通帳を残している人も多いのです。旧姓のままでも、結婚後にそこにお金が入っていれば財産分与の対象です。
また、相続で受け取ったお金はその人のものであり、財産分与の対象になりません。なので、相続で手にしたお金がいくらなのか明確にしておくことをおススメいたします。
ご両親がなくなったのちに、大きなお金が入金されていると相続の可能性が高いです。その分を財産分与から外すようにしましょう。
男性の注意点
男性は、結婚中に妻にお金の管理をしてもらっているという人が多いです。通帳の管理も任せてしまって、いったい自分がいくら預金があるのか知らないという人も多いです。
中には、クレジットカードも妻に預けていて、妻が勝手にカードローンで借金していたなんてこともあります。
なので、お金の管理を妻に任せておくことはいいのですが、時々は自分でチェックしたりするようにしておきましょう。
また、預金通帳を預けている男性は、妻がどれくらいの貯金を持っているのか知らないという人も多いものです。
関係が破綻する前に、どこの銀行のどこ支店に預金があるということぐらいは知っておく必要があります。
そうしないと、財産分与の時に妻は夫の貯金額を知っているのに、夫は妻の貯金額がわからないので圧倒的に不利になります。
離婚をすることを決めたのちは、あなたの給料を全部おろして妻の貯金通帳にうつしている可能性があります。
一旦、現金にしてしまえばその後、どうしたのかは妻以外誰にもわりません。そのため、自分の預金がどのように動いているのか把握しておく必要があります。
離婚が決まった後では、隠されてしまう可能性があるので、円満な時にある程度知っておく必要があるでしょう。
協議離婚をする際の唯一の欠点がここにあります。財産を隠されたら、財産分与で圧倒的に不利になります。
その対策としては、旧姓の預金通帳の金額が結婚後に増えていないのか。ここを必ずチェックするのを忘れないようにしましょう。
住宅ローンを控除する
もし、マンションや持ち家を保有しているのであれば、住宅ローンが残っているのかは重要です。住宅の売れる評価より住宅ローンが多く残っているケース(オーバーローン)がほとんどです。
オーバーローンの場合は、差額分を預貯金の価格から控除します。わかりやいように、数字で考えていきます。
●マイホーム 2000万円
●住宅ローン残債 2700万円
●貯金 500万円(夫)
●貯金 200万円(妻)
●不動産名義 夫
このケースでは、住宅を売却してもローンが700万円残りマイナスになります。なのけ、計算は以下の通りとなります。
2000万円-2700万円=-700万円
500万円+200万円-700万円=0
こういった計算をしていきます。今回の例でいくと、預貯金の財産分与をお互いにしない形になります。それは、夫が住宅ローンを支払い続ける(もしくは清算)するからです。
住宅ローンは、夫名義になっていることが多いので、オーバーローンになっている時は、ローンのマイナスを控除して財産分与をしましょう。
女性サイドは、住宅は負の財産(マイナスの財産)になっているので、財産分与に入れずに預貯金だけを折半してくる人もいますが、協議離婚の実務では住宅ローンを控除することの方が多いです。
そもそも折半の必要はない
そもそも、財産分与を折半するのは離婚裁判の時のルールであって、協議離婚をするのであればどんな割合でも問題ではありません。
元来、家族間の財産分割を他人がどうこういうものではないからです。そのため、お互い話合いの中で預貯金の割合を決めればよいわけです。
先ほどの例であれば、住宅ローンが残っていてマイナスになっているので、それを財産分与に含むのは公平性がとれます。
財産分与には、自動車や電化製品、家具など、離婚後も使用し続けていくものもあるので、明確に折半するというのは現実的に難しいです。
そのため、自動車はどちら。家具はどちらみたいな形でお金だけではないところで決めていきます。すべてを現金化して分割するわけではありません。
だから、預貯金も明確に折半にするという考えを持たなくてOKです。実際に、協議離婚の実務では柔軟に決めていきます。
まとめ
ここまで、離婚時の貯金は折半しなければいけないのか解説してきました。男性は、女性の預貯金を把握していないことが多いです。
逆に女性は、男性の預貯金を把握していることが多いです。男性も預貯金のある場所や金額がざっくりでもいいからわかっておかないと、男性側は不利になります。
へそくりをためていたり、別口座にお金を残していたりする可能性があるので、その点だけは注意しておきましょう。
そのうえで、話し合いで離婚をするのであれば貯金を折半にする必要はありません。貯金以外の財産をトータルでどうわけていくのか。お互いが納得できるように、話して決定しましょう。
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